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2013年10月09日
「水とみどりの講演会」を開催しました!
平成25年10月6日(日)、ぬかた会館(樫山町)で「水とみどりの講演会」を開催し、60名の方がご参加くださいました。(主催は、森づくり人材育成事業を推進している市民活動団体「岡崎きこり塾」/共催:岡崎市)
テーマ「これからの森と人との付き合い方」と題して、東京大学大学院 農学生命科学研究科 附属演習林 生態水文学研究所所長の蔵治光一郎先生をお招きして、午後1時30分から4時までお話をしていただきました。
[講師略歴]
1965年 生まれ
1996年 東京大学大学院 農学生命科学研究科 森林科学専攻 博士課程修了 博士(農学)
[専門]
森林水文学、森・水と人間との関係
矢作川森の研究者グループ共同代表として「矢作川森の健康診断」運営に携わるなど、現場の課題解決に総合的な視点から取り組む市民活動実践者でもあります。
[著書]
『「森と水」の関係を解き明かす』(全国林業改良普及協会)
『森の「恵み」は幻想か ― 科学者が考える森と人の関係 ― 』((株) 化学同人)など、多数
前半では、科学的な観点から捉えた森林についてお話をしていただき、森林の持つ「作用」と「機能」について解説がなされました。
◆作用(メカニズム)の例
・CO2の吸収、放出、固定
・落ち葉や枯れ木が腐って土が作られる
・水を保水し、ゆっくり流す・蒸発させる
・人為的要素の森が自然にかえっていく など
◆機能(サービス)の例
・CO2の吸収、貯蔵
・洪水緩和、水資源涵養(かんよう)
・土砂流出防備、土砂崩壊防備
・防風、防砂
・快適環境、景観形成
・木材、非木材林産物生産 など
わかりやすく「薬」に例えられ、薬には病気を治すなどの機能がある一方、悪い影響を及ぼす「副作用」もある。これと同じで、森林には「保水力」という作用があり、大量の雨が降ったとしても、健全な山であれば大きなダムをしのぐ保水力があること、また、洪水緩和・渇水緩和(水資源涵養)といった機能があり、保水により洪水を防ぎ、雨が降らない日が続いても、山に染み込んだ水が湧水となって、少しずつ流れ出るため、川の水が枯れることがないなど、長年に亘って東大演習林(瀬戸市)での実験結果をもとに、わかりやすく解説してくださいました。
特に、ハゲ山を植林して整備をし、再生させた森林の保水力は、総雨量400mmに対して、実に71mmが山に保水されるという結果で、改めて森林整備の重要性を知ることができました。
しかし、現実には戦後に行われた大規模植林の後、手付かずで放置されている森林は想像以上に多く、本来森林が発揮する能力が失われつつあり、各地で洪水や渇水(薬でいうところの「副作用」)が相次ぎ、これからは、もっと広域で森林整備(木材生産を含む)のあり方・進め方を考え、取り組んでいかなければならないなど、様々な観点からご提案をいただきました。
後半では、実際に取り組まれている各地での活動事例の紹介をもとに、岡崎市での取り組みの参考になるお話をしていただきました。
特に県内有数の林業地である「額田地区」では、国内での木材需要に合わせた森林整備の促進、また、市の水道水の半分をまかなう水源地の水源涵養機能の向上との両立を目指し、具体的な費用の捻出や、長期に亘る明確なビジョン作りの必要性についてなど、様々なご提案のもとで考察することができました。
ご参加いただいた皆様も、最後まで熱心にお聞きいただき、質問タイムではたくさんの方が手を挙げて、具体的な内容について質問をされ、蔵治先生の一つ一つの言葉に耳を傾けておられました。
こうして、2時間半がアッという間に過ぎ、終了の時刻となりました。残念ながら、すべての方のご質問にお答えいただく時間はありませんでしたが、森林の働きや機能、恩恵、そしてこれからの森と人との付き合い方など、終始わかりやすく、具体的に解説していただき、お集まりいただいたお一人お一人が、気持ちを新たにこれからのビジョンを描かれたのではないかと思います。
講師の蔵治先生、ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。
また、岡崎きこり塾のスタッフ皆様、準備・進行等、大変お疲れ様でした。
撮影日 平成25年10月6日(日)
撮影場所 ぬかた会館(樫山町)にて
投稿者 自然共生課
行こう!水とみどりの森の駅!
http://www.morinoeki.jp/index.html